厚生労働省が、2018年10月3日にスイッチOTCの賛否である、
いわゆる妥当性について再考とパブコメの募集が始まったと発表しています。
今回の目玉は、PPIを含んでいたことでしょう。
今回の薬剤師ブログのポイント
・スイッチ化検討一般用医薬品にPPIがある
・一度は否定的に検討は終わった
・副作用対策に疑問符
・過去の検討会の一覧(最下部)
スイッチ化のパブコメが再度開始されたPPIは以下になります。
ラベプラゾール(パリエット)
ランソプラゾール(タケプロン)
オメプラゾール(オメプラール)
バップフォーなども検討されていますが、
議事録ではかなりの時間を割いて、背景の基礎疾患(緑内障)、
高齢者への適正使用について疑問を話されています。
しかしこれらのPPIについては、過去の第5回検討会議で
結果から言いますと、採用不可、いわゆる 否、になっています。
議事録から発言をピックアップしてみましょう。
主要な主な否定的な発言です。
○宗林委員
H2ブロッカーとPPIを薬剤師さんに御相談に行ったときに、こういう症状だったらこちらを先にというか、第1選択は何かというようなことの相談応受が的確にできるのかどうかを少し御質問したいと思います。
消費者としては選択肢が多いほうがいいけれども、どちらから飲もうかなと、1週間であればリスクは大きくないというお話もありますので、その辺は適切に薬剤師の指導を受けて、1週間で回復したら、それはそれでいいことだなと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。
○上村委員
1週間、薬剤師の方がH2ブロッカーとPPIのどちらがいいかということは、はっきり言って私は難しいと思います。H2ブロッカーがあるから、今、必要ないのではないかということでしたが、一理あるのです。逆に言えば、PPIをOTC化するのだったら、はっきり言えばH2ブロッカーはほとんど要らないということです。ですから選択するというのはやはり医者なのです。H2ブロッカーとかPPIの専門的な知識を知って、それでどちらがいいか。PPIは夜中寝ている間は効かないのです。H2ブロッカーは夜中に効くけれども昼間は駄目です。そのようなものが、では薬剤師さんは全てその病態に関して診断できるかということは、私は難しいと思います。
ですから大まかな感じで、H2ブロッカーがあるのだったらPPIを今すぐOTC化する必要がないのではないかという意見も、それでもいいかなという気もしました。そういう状態です。
○湯浅委員
医学的な専門知識がない人が選ぶという基準で考えなければいけない。速効性があるH2ブロッカーが既にあるのであれば、あえてリスクが完全に否定できないようなPPIを無理してまでOTC化する必要があるのかというのが大きな疑問.H2ブロッカーでさえも、今は75歳以上の高齢者に対してはせん妄等の副作用があり慎重投与が必要。やはり、OTC 化については慎重に考えていかなければいけない。
PPIの副作用に対し警鐘を鳴らすような論文が出てきているということは、逆に言うと安易な投与は慎みなさいというメッセージが含まれていると思うのです。そういう状況の中でのOTC化を急ぐ必要はないと考えています。
○柿田委員
眼科医の立場から、閉塞隅角緑内障は禁忌になっています。これは、患者さんが緑内障と言ってくれればいいのですが、言わないと誰も分からないのです。それも眼科医が細隙灯顕微鏡で診ないと分からない病気なのです。これを患者の申告だけで済ませてOTCで売っていいものか、眼科医の立場からは非常に疑問に思っています。引用:第五回議事録より
一方で、PPIのスイッチOTC化について、肯定的な意見もあるようです。
○上村委員
PPIは、NSIDsよりも恐らく安全でしょう。(PPIの短期使用)。PPIテストは、胸やけ、GERDの症状に対して1週間内服していただいて判断します。したがって、1週間を7日分ということで限定すれば、臨床内科医会のほうから種々のPPIの有害事象は出ておりましたが、これは1週間以内に起こるものではありません。したがって、1週間に限定すれば有用性のほうがずっと大きい。胸やけが出ても、病院へ行けない人が多いと思うのです。ただ薬剤師さんとか、一般的に販売される方の倫理感、そういったものがどれだけ担保されるかということが条件です。
学問的に言うと、PPI、こういう論文は胃がんに関しても全然問題にならない論文です。これはヘリコバクター・ピロリが陽性患者の場合には、PPIの長期使用によって分化型の胃がんが増える可能性があるというデータが出て、それで先に除菌しましょうと。PPIを長期使う場合には除菌をすることが推奨されているということですので、1週間ということであればいい。それと、ごまかされない体制をどれだけ作っていただけるかという条件であれば、学問的には私は問題はないと思います。
また過去の各地域の学会や勉強会、
一部の薬剤師がずっと打診しておりました、
OTCもお薬手帳に情報を一元化することについても言及されています。
しかしお薬手帳へ一般用医薬品を記入する欄は従来通り
過去に設けてあるわけですが、それを一般用医薬品を
よく使う消費者には普及していない問題が発生しています。
いわゆるドラッグストアからするとコストも膨らむため、
無料配布には否定的でもあり、またキャンペーンや即売品もある背景等で
ドラッグストア主体で広くOTCお薬手帳を普及できない状況もあります。
発言に戻りましょう。
○佐藤委員
例えばおくすり手帳にきちんと記載するとか、一般用医薬品におくすり手帳に添付できるようなシールを添付してほしいというのは、ほかの薬についても言えることです。
総じて、薬の副作用を未然に防ぐ、それは販売窓口の薬剤師では
不可能である、ということが論点であり、結論は先送りになっています。
また、パブコメを募集開始にはなっていますが、この会議では主に
データ活用による論点になっていますので、
・いかに副作用を防いでいるか
・また適正使用できているか
・基礎疾患はあるが、一般用医薬品をつかえているか
などのデータが必要な場合がありますが、
この種のデータは非常に難しいことが容易に想像できます。
さて、各種スイッチOTCの検討の進捗状況を見てみましょう。
これが平成29年度でした。
これに、平成30年では現在ミオナールが入ってきており、
さらにPPIやバップフォー(副作用や高齢者使用などで極めて否)
が検討段階ですが上記を見てわかるように、ほとんどが不可なのが現状になります。
意見もあると思いますが薬剤師として団結して行く時代では
とも思っています。
ちなみに一時的にドボネックス(カルシポトリオール)も会議議題に入っていましたが
速攻で否になったのを思い出します。
結局は、なかなかスイッチOTCの道のりは厳しいのが現実でしょうか。
そのためには少しずつ、一般用医薬品でのヒヤリハット報告、
副作用対策の報告等、薬剤師が立ち上がらないといけませんね。
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